セミリタイアしたサラリーマン投資家
2017年夏にセミリタイアし、海外と日本のデュアルライフを目指します

かつての米国のIT企業と違って、日本のIT企業に多重派遣や多重下請け構造の問題がなくならないと思う理由

 

日本のIT業界は、偽装請負や多重派遣問題で度々問題にあがります。こうした働き方は間違いなく違法行為なのですがなかなか改善される兆しはありません。

 

日本特有の問題として語られることが多いですが、実は同じような問題はかつて米国企業にもありました。

 

なぜ多重派遣や多重請負構造が批判されるのか

 

その前にまず、なぜ多重派遣や偽造請負が批判されるのでしょうか?

 

多重下請け構造とは、メーカー企業などのエンドユーザーがシステム開発を依頼し、仕事を請け負った元請けが、仕事を2次請け、3次請け、4次請けへと、次々に仕事を発注していくピラミッド構造の事をいいます。下請けと同様に、労働者も1次、2次、3次と段階的に派遣されていきます。

 

A社の社員だと思って派遣されてきた社員が、まったく知らない会社だったということはよくあります。請負契約と派遣契約は契約内容は違いますがあまり関係ありません。請負といいながら、客先に常駐し請負元の社員と一緒に仕事をします。

 

多重下請けは批判されまていますが、下請けに仕事を回すことが批判されているわけではありません。仕事を細分化し外部にアウトソースすることは違法ではありません。

 

自社にソフトウェア開発のノウハウがなければ、外部に依頼した方が物事は効率よく進みます。複数の会社が得意な分野をそれぞれ持っていて、そこを最大限活用した方が仕事が効率よく回るのは想像に難しくありません。

 

しかし、これが多重構造になってしまうと話は別になります。多重構造の問題の被害者は、仕事を依頼するエンドユーザーと労働者です。

 

エンドユーザーは必要以上に不適切な対価を支払います。

 

プログラム工程を他者に委託するのは問題はありません。しかし、同じ工程にもかかわらず、元請けが依頼した仕事がA社、それをまたB社に依頼、それをさらにC社となると、だれが作ったのかもわからないコードを元請けは受け取ることになります。下に依頼すればするほど中間マージンを受け取る業者の数は増えます。

 

1人あたりの単価80万円出したところ、2次請けは70万受け取る、3次請けは60万、4次請けは50万円、80万円で仕事を出したにもかかわらず、実際に作業したエンジニアは40万円の価値しかなかったというのは珍しくありません。当然ながらピラミッド構造の末端で働くエンジニアの給料は下にいくだけ安くなります。

 

技術職とは名ばかりで、工事現場で働く肉体労働者とは大きく違いありません。

 

メーカーからしたら余計なお金を払っているだけ無駄に見えてしまうのですが、社会全体でみると仕事が増えて、失業率も減ってと悪いことではありません。

 

もう一人の被害者は、一方的に不利な条件で働かされてしまう労働者です。

 

ピラミッド構造の末端エンジニアは仕事があるときにだけ集められ、仕事がなくなれば契約を打ち切られて仕事を失います。元請けの客先に常駐し、元請けの指示で仕事をこなしますが、元請けが労働者に対価を払っているわけでも、給与を決定するわけでもありません。

 

いらなくなれば、下請けに連絡を入れて労働者を切り捨てるだけです。技術者が人ではなくてモノのように扱われます。

 

以前下請け構造の末端にいたことがありましたが、客先に一人で常駐し、一度も一緒に仕事をしたことがない自社の上司や社長が自分の給料を決めることに違和感を感じました。早く仕事を覚えて良い評価を受け、良い給料を貰おうと高いモチベーションがあっても無駄になります。

 

不景気で仕事が減ったときにプロジェクトから離脱されるのは、自分が仕事ができないからではなく、自分が外から派遣されてきた社員だから、という理由だけです。

 

またこういう環境だとエンジニアは育ちにくいという問題あります。

 

自社開発する企業は、プロジェクト開発だったり技術力だったり社内に蓄積していきますが、エンジニアを派遣させるだけの企業はノウハウが蓄積しないし、エンジニアを育てるということをしなくなります。仕事の依頼があれば労働者を派遣するだけという単純な作業です。

 

大卒で入社した会社の同期は、入社初日から他社へ派遣され派遣先の新入社員と一緒に新人教育を受けていました。自分が入社した会社に一度も出社することなく、派遣先で働き始めるのです。こういう環境で腰を落ち着かせて技術について勉強しようとは思えません。

 

米国IT企業で多重委託が消えたワケ

 

米国でもかつて元請けの企業が、仕事の過半数を2次、3次、4次という形で複数の企業に再委託していました。

 

政府調達元請けの平均60.4%が下請け及び補給品に再投資され、それらのさらに平均83.2%が3次へ再投資、さらにその83.2%が再々投資、と繰り返される事により、初期調達額$369M(元請けのみ)は、上記再投資の構造より算出される係数2.06を乗ずる事により、$759Mと推計される。これは、中小ソフトウェア企業の売上高総計の2.3%にあたる。

 

上記の資料にあるように、米国でも元請けが受けた仕事の過半数を2次請け、3次請け、4次請け・・・という形で複数の企業に再委託している姿が伺えます。

 

米国IT業界に過去あった多重下請構造、それが破壊された理由 - プロマネブログ



米国企業に多重委託の問題が解消されたのは、90年代半ばIT大国のインド人がアメリカのベンダー企業に代わってその役割を果たしたからです。

 

付加価値の低い仕事を国内の企業に回すよりも、途上国のエンジニアに任せた方が人件費は安く抑えられれます。元請けからみたら、熱心に中向きする業者にはできるだけお金を払いたくありません。

 

インドは人口が8億人を抱えています。大学に行きITを勉強する学生は、プログラムの基礎知識に加えて英語が堪能、世界一のグローバル国家アメリカにとって、これほど条件の良い相手はありません。

 

アメリカでは多くのソフトウェア企業が、オフショアでソフトを 開発している。しかし、ある調査から、これらの企業の大部分が、経費の上昇や分散するチームの管理という新しい課題に直面していることが判明しました。

 

調査対象企業のうち、オフショアの開発者を採用しているのは84%で、2年前の63%から大きく増加している。

 

インドから見ても、多国籍企業がベースのアメリカで働くことは大きなチャンスがあります。

 

日本で働くインド人が、日本企業の副社長や役員にまで上り詰めることは考えにくいですが、多国籍のアメリカ企業にはたくさんいます。グーグルのトップもインド人です。

 

グーグルトップもインド人-IT企業で成功する理由 - WSJ

 

これはアメリカが移民で成り立っている国だからです。現在のアメリカ人のルーツを辿れば、ほとんどがヨーロッパ大陸からの移民です。アメリカは誰にでも平等にチャンスを与える環境を目指しています、そしてそれを目指すことで発展してきた国です。

 

委託先に言葉の親和性が高い中国企業を選択する日本企業は多いですが、アメリカとインドのコミュニケーションに比べたら劣ります。IT技術自体も英語圏の人たちが中心に活躍しているため、英語圏の方が有利です。

 

開発業務を他国へ委託する現状は欧州も同じです。

 

フランスやドイツなどのヨーロッパの大国は、同じEU圏の東ヨーロッパに業務を委託します。EU圏内で関税も掛からず、物価の安い東ヨーロッパの安い労働者を使うことができるからです。

 

こうした例を見れば分かる通り、それほどプログラムをしてテストを組むという仕事は付加価値を生まないということです。

 

プログラムは仕事のひとつの要素にしかすぎません。プログラムは目的ではなく、どうやってビジネスをするかというひとつの手段です。プログラムを書ける人ではなく、プログラムを使ってビジネスが出来るエンジニアが生き残ることがきます。

 

ビジネスとしてお金が発生するのは、誰かの役に立った時に始めて発生します。モノづくりは誰かに役に立つものを創造しますが、プログラムはそのためのひとつの手段です。

 

アメリカは2000年頃からのインドの台頭によって、国内でただプログラムするだけの人は大きく数を減りました。付加価値を生み出せるプログラマーが現在のアメリカのハイテク産業を支えています。

 

日本で多重委託がなくならないワケ

 

日本もアメリカのように国内の仕事が海外に流れて、付加価値の高いプログラマーだけが生き残るかというと、現時点ではそうはならないと思っています。オフショア開発に頼る企業は増えましたが、今後は減少すると予想しています。

 

理由は海外の労働者を使うコストメリットが年々小さくなるからです。

 

日本人エンジニアは単価が高く、不景気と日本円が強くなるたびにオフショア開発は活発化してきました。世界が不景気になると、安全資産と言われる円は買われ、相対的に円は強くなります。円が強くなると、海外の製品や人件費を安く手に入れることができます。

 

不景気になると、メーカーは予算を減らされより安くプロダクト開発を受けてくれるベンダー企業を探します。開発コストを減らしたい需要が強くなるたびに、海外の安い労働力を使うIT企業は増えます。

 

いくらプログラミングが世界標準の開発言語、インターネットが繋がったからといって海外のエンジニアと簡単に仕事ができるわけではありません。

 

単一民俗国家で育った日本人にとって言葉の壁は低くはありません。

 

日本の無駄に高く求める品質や、日本語だらけの資料を外国人が理解するのは困難です。言葉の親和性が高い中国にたくさん仕事は流れましたが、中国の経済成長で開発費用は数倍に膨れ上がりました。

 

中国の人件費は高いからという理由で、ベトナムやインド、フィリピンに委託先を求めています。最近はアジア最貧国のミャンマーを使う日本企業も増えました。

 

アジアの発展途上国の物価高に悩む日本企業は常に安い場所を求めています。人口が多く物価が安いアジア圏がある日本はラッキーです。安い人件費を求めて最貧国のミャンマーまでたどり着きました。

 

日本の国力が低下し、世界で円の価値が相対的に低くなるとコストメリットは小さくなります。今後はある程度海外に流れたエンジニアの仕事も国内に戻ってきます。そうすると派遣させるだけのベンダー企業でも生き残っていけるため、今の仕組みは大きく変わることはありません。

 

アメリカは英語とプログラミングが得なインドを使うことで、国内の多重委託を脱しましたが、日本が同じ道を辿るとは到底思えません。条件があまりにも違いすぎるからです。

 

今後も多重派遣や多重下請け構造の問題は、日本のIT業界からはなくならないと思っています。

 

技術力がなくても生き残れるベンダーたち

 

一時期、多重下請け構造の最底辺にいました。

 

その企業は自社に技術力もなくただ労働者を派遣させるだけの企業でした。プロジェクト開発能力や市場を読む力はなにもありません。取柄と言ったら根性だけで、派遣先に媚びを売って何とか生き残っていけるような企業です。

 

2008年の金融危機のときに、オフショア開発が進めばこうした企業は生き残っていけないだろうなと思っていましたが、10年近く経った現在でも同じビジネスモデルで変わらず生き残っています。給与は地を這うように低いままですが。

 

個人的には名ばかりの技術職で低賃金、長時間労働で浪費するよりも、高単価の派遣やアルバイトに流れた方が楽だとは思うのですが、プライドが邪魔するせいかなかなか決断することができません。

 

たまにこの会社のホームページを見ますが、昔と変わらず10名近い新人社員が毎年入社しています。社員同士が楽しそうにワイワイと盛り上がる写真を載せ、充実した人間味のある会社を装っているのを見ると正直気味が悪いです。以前中にいた立場から、笑顔の裏にある不満は凄まじいものがあると知っているからです。

 

これだけ情報が社会に溢れて、知りたい情報を簡単に得られるようになりましたが、根本的なところは変わらないようです。情報弱者はいつの時代も一定数以上います。表面だけの薄っぺらい情報に騙されて入社するのは、本人の自己責任です。

 

技術力のない会社でも今だに人が集まる日本企業の現状を見ると、米国のIT企業とは違い日本は多重派遣や多重委託を解決することはないんだろうなと思うようになりました。

 

ブラック企業を批判する人は多いですが、ブラック企業が成り立つのはそこで働く人たちが後を絶たないからです。ブラック企業を支えているのは、ブラック企業で働く社員たちです。

 

日本経済が衰退し円が相対的に弱くなることを考えると、海外のエンジニアを多用するケースは減っていくかもしれません。外国人エンジニアのライバルと競い合っている、下請け構造の最底辺で働くエンジニアはますます増えるかもしれません。

 

 

SIerが嫌だからといってベンチャーがいいとは限らない

www.eyasu2008.com

 

ITエンジニアは労力の割に一番ストレスが溜める仕事だと思う

www.eyasu2008.com

 

昇給するためには実力よりも運の要素の方が大きいと思う理由

www.eyasu2008.com