2016年に入ってから、欧州を中心に世界の銀行株が大きく下落しています。イタリアのモンテ・バスキ銀行は51%の下落、英国のRBSは36.7%の下落です。
要因は欧州銀行監督機構(EBA)が7月に実施した健全性審査(ストレステスト)の結果が大きいです。この審査は経済へのショックが3年間続いた場合の各行の中核的自己資本比率を試算したものです。
ドイツ銀行の破綻危機が噂されていますが、それでも下落率は21%です。ドイツ銀行の株価はすでにリーマンショック時を下回っています。
世界の銀行株の暴落率
6月の日経新聞の記事によると世界の銀行株の暴落率です。
国名、銀行、暴落率
51.2%、伊国、モンテ・バスキ、
36.7%、英国、RBS、
33.3%、伊国、ウニクレディト、
27.3%、英国、バークレイズ、
26.1%、仏国、ソシエテ・ジェネラル、
22.7%、スイス、クレディ・スイス、
21.5%、独国、ドイツ銀行、
20.8%、スイス、UBS,
19.9%、スペイン、サンタンデール銀行、
18.5%、仏国、クレディ・アグリコル、
18.0%、仏国、BNPパリバ、
15.6%、日本、三菱UFJ、
13.4%、日本、三井住友FG、
12.5%、日本、みずほFG、
9.3%、米国、バンク・オブ・アメリカ
7.0%、米国、JPモルガン
欧州銀行を中心に世界中の銀行株が大きく下落しているのがわかります。中でもイタリアとイギリスの下落が目立ちます。
日本の大手3行も10%以上下落していますが、欧州に比べればいくぶんマシです。
イタリアのモンテ・バスキ銀行は51%の下落です、不良債権問題が本格化してきた結果といえます。
イタリア銀行の不良債権問題
インフレを発生させる大規模な量的金融緩和とマイナス金利は、民間銀行の財務に悪影響を与えます。中央銀行は民間銀行が本来の仕事をすることを期待して、マイナス金利を課します。
しかし世界的な不況の中、突然民金企業の融資先が増えるわけではないので、手数料の徴収と国債の利率低下で赤字が発生します。
EU加盟国は自国の都合で銀行を救済することはできません、EUのルールに基づいて銀行救済を行うことが求められます。
EUはイタリアや欧州全域に金融システム不安が波及するのを回避する必要があります。
しかし、モンテ・バスキ銀行の大規模な増資と不良債権売却の先行きに早くも危険信号が出ています。
再建成功のカギは50億ユーロに上る増資を年内に完了できるかが重要なファクターになっています。しかし、時価総額が10億ユーロ弱しかなく、80億ユーロの資金を新株発行で調達し、それを使い果たした同行にとっては無理難題ともいえる課題です。
投資銀行から新たな新株引受を得るためには、92億円ユーロの不良債権の売却が前提条件になっています。
イタリア銀行が抱える不良債権額は3600億ユーロと、ユーロ圏全体の3分の1を超える規模です。
かつては日本も銀行株の不良債権問題で数年以上苦しめられました。長期信用銀行など複数の大手銀行が破綻に陥りました。
ドイツ銀行の株価はリーマンショック時より低い
ドイツ銀行はヨーロッパ最大の金融機関です。そのドイツ銀行の株価ですらリーマンショック時の水準を割れています。リーマンショックより3割程低い水準です。
ドイツ銀行は、米国連邦準備理事会(FRB)のストレスチェックで不合格を言い渡されています。
日本を代表するメガバンク、三菱、三井住友、みずほ銀行の株価も下落傾向にあります。日本政府と中央銀行が今の政策を進めるうちは、さらに下落していくことが予想されます。