英語ができれば、世界中で働けるグローバル人材になれる、生涯仕事が無くて困る事がない、キャリアや年収アップに必要不可欠という事が、テレビや雑誌、留学サイトなどでよく叫ばれている。
「英語ができないと将来やっていけない」というのは明らかに嘘だ。英語を勉強し始めて8年近く経ち、海外で2年働き、外国人スタッフとも一緒に仕事して来た自分の立場から言うと、世間一般的に言われるほどの効果はない。
英語は勉強しない方がいいと言いたいわけではなく、メリットとデメリットを理解した上で学んだ方がいいという話である。
【世間で期待される程効果が得られないもの】
・働けるグローバル人材になれる
・キャリアや年収アップ
・生涯仕事に困らない
【英語を勉強することで得られるもの】
・海外旅行が楽しくなる
・多様な価値観に触れられる
・外国人のパートナーが作りやすい
【英語ができなくても困らない理由】
・英語ができないと困る仕事は少ない
・外資系企業でも語学力は上位3%
・ワーホリや留学していた人の就職先
ネイティブレベルで英語ができないと困る仕事
ネイティブレベルで英語を専門にしている職業というのは通訳や翻訳家くらいしかない。ヨーロッパのように言語が違う国が集まるEU圏内であれば別かもしれないが。
通訳者は国際会議で活躍するような同時通訳者になることができれば、時給も高く引く手数多の人材になれる。しかし、この道は楽ではない、4年間語学留学したら誰でも到達できるわけでもない。外国人タレントで政治、経済、娯楽に精通し日本語を流暢に話せる人材が少ないことからもわかるように貴重な存在だ。
大半は時給1500円程度、必要な時だけ呼ばれて働くので、いつも仕事があるわけではない。
翻訳家も企業に常駐して働けるケースは稀で、大半がフリーランスとして働くことになる。1冊の本を3ヶ月間掛けて訳しても税込印税が30万円を切る世界だ。最近はYoutubeのリアルタイム翻訳を見ればわかるように、人工知能のおかげで精度は飛躍的に向上している。近い将来、国際会議以外の通訳者、出版や映画の翻訳は無くなる可能性の方が高い。
英語ができないと困る仕事
高いレベルの英語が求められるのは、商社、駅前留学などの英語講師、外資系などの仕事が思い付く。
商社は給料が高い事で有名だが、一流大学の卒業生で英語ができる人材を採用している。社会人が英語を勉強したからと言って採用してくれるわけではない。
英語講師の仕事は、他にいくらでも代えが効くため給料が低く抑えられてしまう。また、夜間にスクールや塾で数時間だけ働くというスタイルになるため、正社員としても雇用されにくい職業だ。学校教員の英語講師であれば給料は高いが、教員に必要なのは英語力ではなく教員免許だ。
金融やITなど外資系企業では英語力が求められると考える人が多いが、実際には社員レベルで英語力が求められることはない。
外資系で英語が求められるのは本社の上層部と直接やりとりする経営陣で、全社員の割合からするとせいぜい3%程度しかない。
元マイクロソフト取締役の成毛眞氏は著書の『日本人の9割に英語はいらない』
楽天は社内公用語を英語にし、2年以内に英語ができない社員をクビにすると言って話題になったが、楽天の売り上げの9割が国内で得ていることを考えると、デメリットの方が大きい。
英語ができたら有利な仕事
英語ができたら有利な仕事はたくさんある。システムエンジニア、海外営業、ホテルスタッフ、貿易事務などである。しかし、英語ができるからと言って収入に結びつく可能性は低い。なぜなら、英語力よりも本業の仕事が評価されるからだ。
グローバル化が激しいIT業界では英語は必須だと聞く機会が増えたが、ある程度の読解力があれば仕事で困ることはない。業務知識や顧客のビジネスを理解せずに英語を学んでも、人件費の安い外国人プログラマーと競合することになるので、逆に人材価値は下がる。
ワーホリや留学経験者の就職先
ワーホリや留学経験者の就職先を見ると、英語はそれほど必要でないことがわかる。まず、英語と関係ない仕事に就く方が圧倒的に多い。年齢を重ねて業務経験がないと、派遣社員やフリーターとして働く人も多い。
英語に関連する仕事に就いたとしても、留学カウンセラーやホテルスタッフ、ツアーコンダクター、ゲストハウスのヘルパーに就く、空港内店舗の販売員。日本に押し寄せる外国人観光客の接客に就くケースが一番多い。
これらは英語ができなくても就ける仕事だし、給料も決して高くはない。
英語ができなくても困らないまとめ
自分は英語が特別扱いされていることに疑問を感じている。「英語ができないと将来困る」という人は、単に留学学校や英会話スクールのカモになっている可能性が高い。
英語を学んだ方がいいと思うが、必要以上に期待を抱くべきではないし、特別に気負う必要もない。できないよりはできた方が人生得をするよね程度の話だ。
キャリアアップを目指すのであれば、英語を勉強するよりも本業の仕事に集中した方がいいし、非ネイティブがつたない英語で発信するよりも日本語で自分の考えをしっかりと発信できた方がいい。