ウオーレン・バフェットがIBM株を3分の1売却したことで、投資戦略を見直す人が増えています。
わたしもそのうちの一人です、少し前までIBM株を買おうと考えていました。米国株の人工知能を開発する企業に投資したい、配当性向も高いしバフェットが積極的に買っている銘柄なので自信を持って買うことができます。
バフェットが購入していたIBMはIT関連のハイテク企業ですが、アップル、グーグル、アマゾン、フェイスブックとは方向性が違います。
IMBはBtoBのビジネスで収益をあげています。BtoBとは、Business to Businessの略で、企業法人を相手にして事業や商取引を行う会社のことをいいます。少し堅い企業、つまりビジネスモデルがしっかりしているという点です。
IBMの社員は、現在のIT企業を象徴するようなジーンズではなく、黒スーツを着て仕事をしています。これは、エンドユーザーではなくビジネスマンを相手にビジネスをしているからです。
バフェットは兼ねてから、テクノロジーは理解できないからこの分野には投資をしないと明言していました、そのバフェットがIBM株を購入したのは驚きましたが、IBMは本来のハイテク企業とは異なる企業であることを理解しなくてはいけません。
IBM株を売却しましたが、アマゾンとグーグルに投資をしなかったことを後悔していると言っています。バフェットが買いたかったのはIBMではなく、アマゾン、グーグルだったということです。
バフェットを参考にして投資判断をしている人は、このタイミングで自分の投資判断を大きく見直す必要があります。バフェットに追従してハイテク産業に投資するのか?それとも過去のバフェットのやり方に従うのか?判断が難しいところです。
バフェット氏「失敗した」 アマゾン投資機会逃し後悔 :日本経済新聞
バフェットが売却した理由は?
バフェットを研究しているブロガーさんの記事によると、バフェットがIBMを売却した理由は、IBMに重点的に投資するよりも他のハイテク企業の方がより儲かると判断したから。IBMに投資し続けることで、他の投資機会を失っているからだといいます。
わたしにはバフェットの真意がわかるわけもないですが、たしかにその通りなのかもしれません。
ハイテク産業が大規模な予算を組んで研究開発している人工知能が、社会を圧巻するのは間違いないですが、IBMのワトソンはグーグル、アマゾン、フェイスブックに比べて質が劣ります。近い将来、IBMのビジネス領域も彼らに浸食されるのかもしれません。
ハイテク企業は買わない方がいいと思う理由
投資判断は各人それぞれ違いますが、わたしはハイテク企業には今の段階では参入しないことにしています。それは以下の理由からです。
・ハイテク産業は競争が激しい
・現在の株価が高過ぎる
自分がIT業界で働いているということもあるのですが、ハイテク企業は競争が激しいということです。グーグル、アマゾン、アップルが優れた社員をたくさん抱えて、優れた製品を開発し、優れた企業であることに代わりはないのですが、それでも変化が激しすぎるということ。
この業界にいるとインフラなど単純なビジネスでお金儲けをしている企業が羨ましくなります。
電気やガス、水道、鉄道、かれらは労力も頭を使う事もなく、独占企業だからという理由で大金を稼ぎます。世の中が複雑になり、サービスが向上するほどこうした安定したビジネスに投資したくなります。
もうひとつ気になるのは、やはり株価が高すぎるということです。どの企業も2008年の10倍です。
たしかに、IT企業は他の産業とはルールが違う、高いと思っているといつまで経っても買えない、というのはわかるのですが、それでも高すぎるのです。
ハイテク企業が苦手なバフェットがIBMに投資をすると聞いたときは、なるほどなと思いました。IBMは他の企業と違いBtoBビジネスで堅いビジネスを展開しているからです。加えて、人工知能のワトソンという武器もあります。
既存のハイテク産業とうまい形ですみわけができています。
もちろん、こうしたことはバフェットも十分に理解した上での今回の判断でうす。メディアには発表していないだけで、IBM株を売却した明確な理由があるかもしれません。
しかし、バフェットがハイテク産業に積極的に参入するからという理由で追従する人は気を付けなければいけません。
伝説の投資家とはいえ、バフェットはすでに86歳です。ハイテク産業に関して投資判断をしているのは、その下にいるコームズやウェシュラーかもしれません。
バフェットの功績は間違いないのは言うまでもないですが、ハイテク産業に積極投資をするのは超高齢のバフェットか、バフェットに認められた投資家ということになります。
株式投資で大きく負けるのはどういうときか?
今回の報道を聞いて将来は何が起きるかわからないので、安全な場所に資産を置きたいという気持ちが強くなりました。2017年あたりからセミリタイアを本格的に考えていることもあり、この気持ちは余計強くなっています。
投資を始めた当初は、資産も大してないし失うものは何もないので、より効率的に資産を増やすために集中投資をメインに考えていましたが、今は分散投資に考えがシフトしています。
インフラなど安全で堅守なビジネスに資産の6~7割を置いて、残りの余剰資金でリターンが多いけれどリスクが高い資産にお金を投資するのがベストだと思いました。
おそらく、前々からグーグル、アマゾン、アップルなどのハイテク産業に投資をしたいと思っていたけど、高値過ぎて入れない、「高いと思っているといつまで経っても買えない」というジレンマに苦しんでいた投資家はたくさんいると思います。
こんかいの出来事は背中を大きく押してくれます。しかし、バフェットがハイテク産業に積極的に投資をするからといって、持ち株を減らして今がチャンスだとハイテク産業に投資しようと考えるのは非常に危険です。
なぜかというと、大きな勝負に出ようとしたときに大きな失敗をしてしまうからです。
バフェットは他の安定した持ち株を所有した上で、ハイテク産業に買い増ししているということを忘れてはいけません。バフェットのように豊富な資金があり、ぶれない投資指針を持っていると、たとえ暴落したとしても買い増しするので最終的に儲けることができますが、普通の投資家は彼のように振舞うことはできません。
ジム・ロジャーズの投資方針を思い出す
最近は予想を外してばかりとバフェットと比較して人気がないジム・ロジャーズですが、こういう時こそ彼の言葉を思い出します。同じ三大投資家でもロジャーズとバフェットの視点はまったく異なります。
ロジャーズは、「みなが今回は今までとは違う、熱狂し始めたら危ない」といいます。バフェットが積極的になったことで"今までとは違う"という状況が生まれやすくなりました。
今回のバフェットの判断で、ハイテク産業がさらに過熱することは間違いなさそうです。過去10年で10倍になったけれど、さらに10倍になると考える人が増えるかもしれません。
こういう時こそ、電力株などインフラ系に積極的に投資をしたくなります。そして暴落が起きた時こそハイテク関連の株を買いたくなります。