2008年の世界的な金融危機"リーマンショック"から9年が経った。
一部の企業を抜かして、業績を回復することに成功した企業のサラリーマンの頭の中からは、この時の記憶が消え去ったかのように感じる。
自分が在籍していた企業では、リーマンショック以降賞与が3年間カットされていた。今ではV字回復に成功し、リーマンショック以前よりも支給額は増えたことに安心しきっている。
現在の給与水準が今後も維持されると思って散財している人は多い。しかし、中小企業では一瞬でゼロになることを忘れてはいけない。
金融危機は常に周期があるからだ。9年前はリーマンショック、その8年前はインターネットバブルの崩壊、その3年前はアジア通貨危機が発生している。タイミング的にも世界的な金融危機はいつ訪れるかわからない状況だ。
暴落局面では、株式投資家にとって資産を増やす大きなチャンスに変わる。その時のためにタネ銭を貯めておいた方がいいだろう。うまく安値で株式を購入できれば、リタイアできる時期が早まるかもしれない。
政府債務残高は高い
次の世界的な金融危機は近いと言われている。リーマンショック以降、世界中の先進国の政府債務が膨張している。
2008年に日本の債務は"961兆円"だったが、2016年には"1264兆円"と大台を超えた。政府債務残高とGDP比は"191%"から"250%"、GDP比率は世界で1番高い。
アメリカの債務は2008年に"10兆"ドルだったが、2016年には"20兆ドル"と倍増した。GDP比は"72%"から"108%"へ。債務残高はアメリカが圧倒的に多いが、GDP比では日本がダントツで高い。
政府の信用力が低下し国が発行する通貨よりも、仮想通貨に資金が流れているのは無関係ではない。
次にリーマンショック級の金融危機が起きたら日本経済はどうなるのか。 2008年に何が起きたか整理してみた。何が起きたか整理しておくと、次の暴落も慌てずに対処できると考えているからだ。
リーマンショックとは
そもそもリーマンショックとは、アメリカに本社を持つ大手の金融機関(投資銀行)だったリーマン・ブラザーズが"64兆円"もの負債総額を出し倒産したことから始まる。"64兆円"というとアルゼンチン国のGDPと同じ規模になる。
かつての米投資銀行のように過度にリスクを取っているのは、EUのドイツ銀行だ。ドイツ銀行の負債総額は260兆円と言われている。リーマン・ブラザーズの4倍の規模だ。
リーマン・ブラザーズが倒産した影響はアメリカ経済を超えて世界に波及した。サププライムローンと言われるリスクの高いデリバディブ商品を、世界中の金融機関にばらまいていたからだ。
サブプライム・ローンの中身は、低所得者層でも住宅ローンを組んで購入できるようにパッケージ化したものだ。このローンの特徴は、借りたお金で購入した住宅を担保とすることで低金利で貸し出すことができる。しかし、数年後には金利が上昇するため、返済が膨らみハイリスク商品になる。
住宅と土地価格が上がることが前提で作られているので、価格が上昇するうちは何とか維持できる。しかし景気の流れが変わり、価格が下がった途端に破綻者が溢れることになる。
これが現実になったのがリーマンショックだ。
サププライムローンは世界中の金融機関にばら撒かれているため、破綻者から資金を回収できない。
金融関係者はいつになるかわからないが、いずれこうなることを分かった上で行なっていた確信犯だ。しかし、オバマ大統領は被害が拡大するのを恐れて、金融危機を引き起こした企業を税金で救済した。救済するために多額の国債を発行したことで、政府の債務残高は大きく膨張した。
リーマンショックが与えた日本への影響
NYダウ平均は"13000ドル"から"7000ドル"まで"50%"近く暴落した。日経平均も同様に、"13000円"前後で推移していた株価は、"7〜8000円"まで暴落。
当時日本はリーマンショックの影響を他国よりも受けないと言われていた。なぜなら、バブル崩壊を経験した日本の銀行はリスクを取ることを嫌っていたため、サププライム関連の金融商品に手を出していなかったからだ。
しかし、問題は円高と世界の急激な需要の縮小にあった。
為替相場は1ドル105円から90円へ、最終的に76円と歴史的な円高になった。過度な円高になると、日本製品は海外から見て割高になるため買い手が減ってしまう。海外へ輸出しているメーカーの業績が落ちると、関連の下請け企業の業績も下がるため日本経済は不況に陥る。
円高と需要の低下で輸出製造業、主に自動車、鉄鋼、電機産業が前年比4割減と大きく業績を悪化させてしまった。
販売減に対応するためにコストを削減する必要がある。そのためには工場の生産ラインを停止しなければならない。製造業が多い日本産業で生産ラインの停止は、期間労働者の雇用を打つ切らなければならない。
2007年に"3.8%"だった日本の失業率は、2009年に"5.1%"まで上昇した。世界的にはマシな方だが。
90年代にバブルが崩壊した日本は、社員を雇うことに慎重になっていた。1度雇用したら社員を解雇できない以上、非正規社員を使うしかない。そして、リーマンショック時は生活が不安定な非正規社員が多くの仕事を失った。
社員の雇用は守られるのは今でも変わっていないため、現在は労働者の4割は非正規社員だ。
暴落は買いのチャンス
契約社員や下請け企業の立場は弱い。2008年に新卒社員として働き始めたが、リーマンショック時は予算を減らしたいメーカーの都合でプロジェクトの延期や中止が急増した。契約社員や客先派遣は契約を打ち切られることになる。
当時、社会や経済の仕組みをよくわかっていなかったので、この先日本経済は良くなることはないと思っていた。今にして思うと景気サイクルの一環にしか過ぎない。
契機に左右されない自動車メーカーは大打撃を受けたが、今ではリーマン時よりも株価は高くなっている。暴落時に株を買っていれば、3倍、4倍の利益を手にしたことになる。
→ 投資家がセミリタイアするベストなタイミングは、市場が暴落してからがいいと思う理由
平均年収が下がった
米企業は不景気になったら社員の首を切ることで生き延びようとするが、首切りができない日本企業の場合、非正規社員の打ち切り、それと賞与カットで対応することになる。
リーマンショック後は多くの中小や零細企業でボーナスがなくなった。この時に在籍していた企業は未だに賞与は支給されていない。
リーマン後のサラリーマンの平均年収は430万円から406万円まで減少した。年代別でみると、最も顕著だったのが30代男性、600万円以上は、"28%"から"19%"に減った。一方で400万円未満は"15%"から"29%"へと急増した。
年収で500万円以上稼ぐのは難しい時代
→ サラリーマン年収500万円の壁、30代では36%が500万円を超える
リーマンショックの記憶はない
最近思うことだが2008年から9年しか経っていないが、多くのサラリーマンの頭の中からリーマンショックの記憶が消えている。
自分が在籍している企業もリーマン時に、賞与支給がゼロになった。
考えて欲しいけれど、夏と冬賞与、それから決算賞与の支給がゼロになると私生活に与える影響はとても大きい。
年収が400万円、手取りで月に20万円しか貰えなくても仕事に耐えて働けるのは年間100万円の賞与があるからだ。賞与がゼロになると言うことは、年収は300万円まで落ち込むことになる。
従業員の多くは、これからも給与や賞与が上がることを期待して仕事をしている。賞与の話をしていると、まさかリーマンショックのような事態が再び起きるとは思っていないかのように話している。
この9年間の間に、住宅ローンを組んでマイホームを購入、新しいクルマに乗り換えた人も少なくない。投資で資産を築いたり、収入源を複数増やした人は問題ないだろう。多くの人はサラリーマン1本だけの収入に頼っている。
常に賞与が消えてしまう可能性があることを忘れてはいけない。自分は2008年に初めて社会に出て働き始めたため、当時の不況の記憶は鮮明に残っている。
大手メーカーから仕事を受けている下請け企業は、不況に合うと何も打つ手がない。日本の大半の企業は下請け企業だ。
組織にしても個人にしてもリスクの高いビジネスをしている割に、万全な準備をしている人は少ない。
企業であれば契約先を増やす、エンドユーザーと直にビジネスを増やす、個人であれば収入源を複数増やさなくてはいけない。
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