トマス・J・スタンリー
「となりの億万長者-成功を生む7つの法則」
となりの億万長者
長い間読まれているベストセラーです。これを読むと、一般の人が想像するお金持ちと実際のお金持ちとでは、大きな違いがあることがわかります。
お金がない人たちは、お金持ちになると贅沢なディナーを食べて、高級車に乗り、高級時計を買い、セレブな毎日を想像します。
だからこそお金がない人たちは、お金持ちにならなくても、幸せな生活を築けるといいます。これはこれで納得がいく答えです。
しかし、この考え方自体がそもそも間違っています。
となりの億万長者を読むと、セレブな生活を送る人たちは、億万長者の中で実はごく少数派です。実際に一代で億万長者になるような人たちは、それほど贅沢な生活をしていません。彼らは質素な生活を好みます。
たとえば、世界の億万長者ランキングの3位にランクインする、ウオーレン・バフェットも608億ドル(6兆円)の資産を築きがら、その生活は質素なことで有名です。
自宅は60年間住み続け、中古車を何年も乗り続けています。
彼らは経済的自由を獲得し、時間やお金に縛られない自由な生活を手にします。そのためにお金が必要だということを知っています。高級住宅街に住み、高級車を買うような人たちの中で、本当のお金持ちはそれほど多くはありません。
彼らは、稼ぐ収入も多いですが、それ以上に出費も多いため、いつまでたっても資産を形成することができないからです。
平均的な億万長者はサラリーマンよりも質素な生活を好む
億万長者を相手にしている投資銀行マンは、億万長者よりもスーツにお金をかけている。腕時計は5000ドルするが、お金持ちはその10分の1のお金も時計にかけない。
銀行マンは新型の輸入車に乗るが、億万長者で高級輸入車に乗るのはごく一部です。
書籍の内容をまとめると、
①億万長者の半分は235ドル以上の腕時計を買わない
②全員が新車を買うわけではなく、億万長者の37%は中古車を買う
③平均的な億万長者は、一番高い車に2万9000ドル使う
④平均的な億万長者が買った一番高いスーツは一着399ドル
⑤億万長者の半分は140ドル以上の靴を買ったことがない
⑥過半数の億万長者は1ドルたりとも遺産相続を受けていない
⑦最初に収入から貯金する分を分けて、残ったお金で生活する
平均的な年収400万円のサラリーマンよりも、質素な生活をしているお金持ちが多いことがわかります。例えば、2万5000円以上の腕時計を買わないとか、最も高いスーツでも4万円程度とか、靴にいたっては1万5000以下です。
おそらく、ほとんどのサラリーマンの方が、彼らよりも消費が多いのかもしれません。
お金持ちと言われる人たちの生活は、私たちの想像とはかけ離れていることがわかります。
テレビによるお金持ちの先入観
わたしはこの本を読んだときに衝撃を受けました。自分が思い描いていたお金持ちと、実際のお金持ちとの間に、想像以上の大きな差があるからです。
このギャップの差は無視できない程大きいです。どうしてここまで大きくなってしまったのか考えてみると、2つの答えに辿り着きました。
ひとつは、テレビによく現れるお金持ちの人たちが、一般的なお金持ちだと思い込んでいるからです。とくに子供の頃に植え付けれた印象というのは、なかなか頭の中から離れません。
テレビに出るような目立ちたがりのお金持ちは、他人に見せびらかすために消費をする承認欲求が人一倍強い人たちです。
飛行機に乗ってランチを食べに行ったり、1回のディナーで数百万円使ったり、ムダなことにお金を消費し、それをテレビという媒体を使って庶民に見せびらかします。
これを見た親が、金持ちになると頭がバカになると言ったり、生きていけるだけのお金があれば十分だと子供に話します。わたしも子供の時に、親にそう言われた記憶があります。そうならないために、勉強しなさいとも言われました。
大人になってわかることですが、本当に質素な生活をしている本物のお金持ちを、テレビに映したところで、だれも興味を湧きません。
番組を制作する側は、真実よりも視聴者が見たいものを作ります。
サラリーマンの成功者をみてしまう
もうひとつの理由は、たいしてお金持ちではないのに、社会に出て中途半端に成功したサラリーマンを見るからです。
社会人成り立てのお金がない新人にとって、10歳上の仕事ができる上司や先輩が、良いスーツや時計を身に付けて働いているのを見ると憧れます。
そして自分もいつか同じように成功したいなと考えます。まとまったお金が入ると、収入に見合わないスーツや時計を買ってしまいます。
特に営業の仕事をしていると、説得力を持つために、ムダに高級なスーツや時計を買う傾向が強いです。
安スーツや安時計を身に付けている営業マンから、だれも保険を契約したいとは思わないからです。
書店にいくと、「一流のビジネスマンは...」という関連の書籍が並びます。これを見たサラリーマンは、背伸びしてでも良いスーツに身を包もうとします。
わたしも社会人成り立てのころに、中小企業の社長に同期の新入社員とともに、豪華なレストランに連れていかれました。豪華なレストランで食事するために、おれも頑張って出世しようと意気込むものです。
サラリーマンで成功している人たちが、億万長者に慣れない理由は、毎日忙しく仕事をこなし、収入の割に支出も多いからです。
手取り年収が300万円しかない時代の生活をしていればいいのですが、手取り年収が500万円になると500万円分の生活水準を保ち、手取り年収が1000万円になると生活水準も同様に上げてしまうからです。
億万長者になれる人は、年収1000万円の収入でも300万円の生活を楽しめるかどうかで、大きく別れてきます。
生活水準を上げる人は自己顕示欲が強い
収入が上がるたびに生活水準を上げてしまう人は、見せびらかし的な消費行動をして、他人と差別化したいという欲求が強いからです。
高級車に乗りたいのも、良いスーツを着たいのも、自分がお金を持っていることを人に自慢したいからです。
億万長者になるような人たちは、お金は贅沢な暮らしをするために必要なのではなく、お金は経済的自由になるために必要だと考えています。
経済的に自由になると、他人のために生きる必要がなく、自分らしい生き方を選択することができます。
目先の消費欲のためにお金を求めてもキリがありません。
人間の欲望には限界がないからです。
満足するのは最初だけで、時間が経てばまた新しいものを欲しがります。
高級車を買うために、頑張って働いて高級車を買います。満足するのは最初だけで、高級車に乗る毎日が日常に変わります。そしてまた新しい車を欲しがります。
眺めが良い高層マンションの最上階に住むために、頑張って働いても、実際に住んでしまえばこれも日常の光景にかわります。
消費欲と見せびらかすために仕事をしていると、平均的な億万長者とは正反対の行動を取ることになります。
日本版のとなりの億万長者もあります。
日本はアメリカのようにお金持ちのデータが少ないので、やや情報に欠けます。