セミリタイアしたサラリーマン投資家
2017年夏にセミリタイアし、海外と日本のデュアルライフを目指します

リコール費用が1兆円でも経営破綻寸前のタカタが潰れない理由

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最近マネーゲームになりつつあるタカタ株です。エアバッグ問題でリコール費用の総額は1兆円を越すと試算されています。

 

タカタの悲観なニュースが出るたびに、

「どうしてこの会社はまだ生き残っているんだ」

「どうして倒産しないんだ」

「こんな会社早く潰れろ」

というようなコメントが多いですが、タカタのエアバッグ問題はそれほど単純でありません。

 

タカタが潰れないのは潰れたら困る企業があるからです。利害関係が複雑に絡まりあっているため、タカタをはじめ自動車業界にとってかなり頭の痛い問題です。三菱自動車の燃費不正よりもよっぽど難しい問題です。

 

タカタの事例は業績回復株好きなわたしには、とても興味深い事例となりつつあります。再建するのか、法的整理で転落するのか、まだまだ先のことはわかりませんが学べることがたくさんあります。

 

 

1兆円の負担を抱えるタカタが潰れないワケ

<Yahooファイナンス>

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タカタの時価総額は300億円、資本金は1400億円、純利益はリコール問題が本格化する前で100億円程度です。どう考えても1兆円を超えるリコール費用を払えるとは思えません。仮に自動車メーカーが半分負担したとしても、5000億円の債務が残ります。

 

自動車メーカーがリコール費用を計上した途端にタカタは債務超過です。

 

これだけ債務があると銀行も当然資金を貸し出しません。毎年100億円純利益を稼いだとしても返済まで50年かかります。

 

こういうケースの場合、本来であればまっさきに法的整理をします。企業も事業を継続しても数年にわたって借金を持つことになるので、債務整理して借金を帳消した方が早いからです。

 

しかし面白いことに事態はそれほど単純ではありません。そうできない理由があります。タカタが債務整理をして一番困るのは自動車メーカーだからです。

 

タカタが債務整理をした場合 

・リコール費用をタカタに代わってすべて負担することになる
・世界シェア2位のエアバッグの供給元がなくなる
・米国安全局の矛先が自動車メーカーに向かう

 

百害あって一利なしです。

 

リコール費用をメーカーが肩代わりする問題

 

自動車メーカーはリコール費用をタカタに代わって計上していますが、それを請求していません。理由はタカタが潰れたら困るので、スポンサー企業選定が決まるまで待ってくれています。

 

昨年、ホンダはタカタの代わりに4500億円程度をリコール費用として計上しました。これをそのままタカタに請求すれば債務超過で潰れます。

 

自動車メーカーからしてれば、タカタが事業を続けながら長期に渡って返済してくれた方が助かります。タカタという企業が存在しなければ、1兆円分のリコール費用は自動車メーカーが負担するだけの話です。

 

そういう意味で自動車メーカーはタカタの債権者です。JALという企業はかつて、法的整理で株券を紙くずにして看板を立て替えて事業をゼロからスタートしましたが、自動車メーカーがこの方法を受け入れるわけがありません。

 

タカタが自動車メーカーの要望を聞いて法的整理という手段を取らないのであれば、今後もタカタの製品を購入するということを意味しています。

 

自動車メーカーはあくまで今回問題を起こしたエアバッグを使わないと明言しているだけに過ぎません。

 

世界シェア2位の供給元がなくなる問題

 

もうひとつ自動車メーカーにとって頭が痛いのは、タカタのエアバッグが世界シェアの2位を占めるということです。ホンダを始めとする多くの日本メーカーは、タカタのエアバッグに頼っています。

 

自動車メーカーは、エアバッグを他の企業から調達すればいいじゃないかと思うかもしれませんが、車の製造はプラモデルを組み立てるのとはワケが違います。エアバッグに合わせて車も製造されています。

 

タカタはエアバッグ以外にも、シートベルトなど他の自動車製品を使用しています。今後はリスク分散のためにタカタ依存度を徐々に減らしますが、それでも多くの製品をタカタに頼っています。

 

タカタはエアバッグ以外にも以下の部品を供給しています。

 

・エアバッグ38%
・シートベルト32%
・ステアリング・ホイール16%
・その他13%

 

日本の自動車メーカーは徹底したコスト管理を行っています。製造コストを落とすために、効率を重視すれば自然と下請けの供給元を減らした方が合理的です。その結果、車の部品を供給する小さな会社が、数千万台にも昇るリコールに対応する羽目になっています。

 

これは明らかに自動車メーカー側に落ち度があります。ホンダの売上高は11兆円ありますが、タカタの売上高は4000億円しかありません。タカタだけにこの問題を押し付けるのはあまりにも理不尽です。

 

米国安全局の矛先が向かう問題

 

米国安全局は過去に何回も自動車メーカーとバトルしています。これは高品質で安価な日本車から、自国の質の悪いアメリカ車を守るためです。アメリカは日本よりも国土が広い、そのため車に依存した車社会です。日本企業は自国の市場並みに北米市場に比重を置いています。

 

燃費がよく故障もしにくい日本車はアメリカでも人気です。2014年、米国の国産車販売台数トップ10を日本勢が独占しています。10台中7台が日本のメーカーによって独占されています。

 

米国の国産車販売台数トップ10上位を日本メーカーが独占! | 自動車ニュース&スクープ|シークドライブ

 

米国では景気が悪くなるたびに日本の自動車企業を批判してきました。日本の自動車がアメリカの自動車業界の雇用を奪ってきたからです。日本とアメリカの貿易摩擦でも自動車が たびたび指摘されています。

 

最近ではトランプ大統領が日本車をメディアを使って攻撃しています。

 

日本の自動車メーカーは理不尽な米国安全局の対応にもおとなしく従ってきました。そして今回は安全局の矛先は部品メーカーにも及びました。タカタが適切に対応していれば、事態はここまで大きくならなかった可能性は十分あります。

 

冷静に考えればわかりますが、米国安全局の主張はあまりにも理不尽です。人の命に係わるといえば都合よく世論も味方につけて批判しやすいですが、中身は薄っぺらいとしかいいようがありません。

 

米国だけで最大1億2000万個のリコール対応を検討しています。死亡事故が起きたのは10件と報告されています。死亡する確率は1200万分の1です、しかもエアバッグが作動するほどの事故が発生した時限定です。

 

5億円のジャンボ宝くじが当選する割合は1000万分の1、8億円のロト7に当選する確率は1029万分の1です。

 

宝くじで億を引き当てるのと同じレベルです。エアバッグはあくまで事故が起きたときに補助的な役割をするもので、今までたくさんの命を救ってきました。1200万分の1の確率で起きる事故のために、1兆円の負担を強いられています。エアバッグで死亡したといいますが、エアバッグがなければそもそも交通事故で死亡しています。

 

こういう背景があって、リコール問題が発生した当初、自動車メーカーはあまりタカタを責めることはありませんでした。

 

タカタはエアバッグの開発で先進的に行ってきた企業です。今回の事故の原因といわれる硝酸アンモニアの開発もホンダと一緒に進めてきたもののひとつです。こういう事態が起きると、どこの企業も自社開発をやめて既存の製品しか使わなくなります。

 

新製品のリスクを恐れるあまり技術開発が止まり、似たよりよったりの企業ばかりになります。そう考えるとこの問題は不幸でしかありません。

 

たとえ1200万分の1でも失敗が許されない、テスト工程に負担がかかり製造コストが跳ね上がります。こういう問題が、日本の電化製品のようにどこも似たよりよったりのものばかりが作られてしまうのではないでしょうか。

 

経営危機はタカタのワキが甘かった

 

テレビが映らないからといって、テレビの部品メーカーに苦情をいう人はいません。クレームをいうのはテレビを製造した東芝やソニーであって部品メーカーではありません。自動車メーカーも十分にテストしたけどそれを見逃したということは、自動車メーカーの責任も大きいです。

 

タカタはもしもの事態に備えて、賠償の上限を設定しておくべきでした。タカタばかりが批判されていますが、自動車メーカーの責任の方が大きいです。

 

賠償の上限を決めておくのはビジネスの基本です。例えば10億円規模の売上しかないソフトウェアを製造する中小企業が、大手メーカーのハードウェア製品にインストールするソフトを作ったとします。

 

その製品を世界中で販売して1000万台売れました。ソフトにバグがあったからといって、ソフト企業が数千億円の損害賠償を求められたら、その企業は一瞬で潰れます。

 

ひとつのソフトを作る売上が5000万円で、賠償金が数千億円になるのであれば、そんなリスクの高い仕事を引き受ける下請けはいなくなってしまいます。

 

ホンダとタカタで賠償の上限を決めていなかったのは、お互い付き合いの歴史が長く信頼しあった関係だったからだと思います。今回はそれが仇となりました。二人三脚でエアバッグの開発・量産を進め、ホンダはタカタのエアバッグ搭載率50%となり、そしてタカタは世界のエアバッグシェア20%を握るまでに成長しています。

 

タカタ経営陣のワキが甘かったといういうしかありません。

 

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最近タカタ株は暴落しました

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