セミリタイアしたサラリーマン投資家
2017年夏にセミリタイアし、海外と日本のデュアルライフを目指します

中高年ブラック派遣 中高年の3人に1人が非正規社員

 

中沢彰吾
「中高年ブラック派遣 人材派遣業界の闇」

 

中高年の転職が事実上不可能な日本社会では、サラリーマンが一度無職になると社員としての再雇用はほぼ不可能です。

 

中高年で仕事を失った多くの元サラリーマンは、パートより実入りがいいという理由で派遣業界へと流れていきます。

 

ブラック派遣の世界は、年収3000万円を豪語する人材派遣会社の20代社員が、自分の親世代の中高年を時給数百円の日雇い派遣で酷使されているとあります。

 

突然の失業で追い込まれた人たち、女性ワーキングプアの実態、底辺労働に希望が見いだせない若者たちなど、現代社会のいびつな構造を明らかにするノンフィクション。

 

こういう類の話は個人的に好きなので、つい手を取って読んでしまいます。現状の自分にいい意味で危機感をもたらしてくれるからです。

 

残酷な言い方かもしれませんが、いくら企業や政府のせいにしてもこういう問題は最終的には自己責任に落ち着きます。

 

年を取れば誰でも労働的価値は低くなります。知的労働している人は柔軟性や吸収力が失われるし、肉体労働している人は30〜40歳すぎると謙虚にパフォーマンスは落ちます。

 

これらはいつの時代も不変の事実です。柔軟性が失われる代わりに経験と知識で補わなければならないのはいうまでもありません。

 

今まで一生懸命ばんばってきました、助けてくださいでは問題は解決しません。

 

 

 

  

非正規の45歳をすぎると非正規の割合は急増する

 

1990年に比べて着実に非正規社員の割合は増えています。 これはたった24年間の変化です。

 

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総務省統計局

  

15〜24歳の割合の非正規雇用の割合が大きいのは、高卒で働く人が減り、大学の在学者がアルバイトをするからだと考えられます。

 

65歳以上で多いのは働く労働者の数は多くないですが、年金だけで生活できない人が警備員やコンビニのパートで生計を立てているからだと考えられます。

 

驚くことに45〜54歳の場合は、3人に1人が非正規、55〜64歳は2人に1人が非正規です。

 

都内にいるとコンビニで働くアジア系の外国人をよく見かけますが、地方にいるとコンビニで働くあきらかに中高年以上の男性、女性をよく見かけます。

 

バブル崩壊後、とりわけ97年の金融危機を境に日本企業はリストラを本格化しました。年間の自殺者が40%も増えたころです。統計によればその多くは45歳から64歳までの無職の男性です。

 

中高年の転職が事実上不可能な日本社会では、サラリーマンが一度無職になると社員としての再雇用はほぼ不可能です。

 

45歳以上からの非正規社員の伸びをみると、その傾向が如実にあわられています。

 

民主主義社会は少数派の意見は切り捨てられます

 

著書によると

 

「この問題が根深いのは、経費削減や税金の無駄遣いの防止、
 法律遵守や公共の福祉への貢献を求められる多くの団体、企業が、
 事業入札に安値で臨む人材派遣会社を「歓迎」していることである。」

 

「彼らの増殖と繁栄は底辺の労働者のさらなる困窮と表裏一体であり、
 日本社会の創造的な活力を削いでいるのではないか。」

 

いつも思うことですがこういう境遇にいる人たちは、自分たちのことをまず「被害者」としてみるため、客観的に物事をみることができていません。

 

経費削減や税金の無駄使い防止のためとありますが、これの何が悪いのでしょうか。現在の国の借金や社会保障の負担を知って発言しているのでしょうか。

 

社会はだれも人材派遣を「歓迎」していません。こういう結果になったのは成長期をすぎた先進国が不況に苦しんだ結果であって、原因ではありません。

 

ビジネスはボランティアで成り立っているわけではありません。経済のパイが縮小し続ける以上、形はどうであれ避けらないことです。

 

一部の悪徳な業者は生まれますが、それはどこの業界にもいます。非正規社員が政府に改善を求めることができるとすれば、それは社員の規制緩和くらいです。そうなったとしても、非正規に落ちついている人たちの大半はどのみち職を失います。

 

基本的に経済の全体のパイというのは変わりません。目の前に10人(労働者)いても椅子(社員)が6つという絶対量(正規社員6割)はかわりません。ひとつの席を2人ですわるか、3人で座るかという話です。

 

この椅子の数を政府は増やすことはできません。政府に椅子を用意してもらおうと考えるのではなく、自分で席に座れるようになるしかありません。そういう意味で雇用問題はどこまでいっても自己責任です。

 

政府にできることは名前付きの椅子から名札を外すことくらいです。名札がはずれても椅子に座れない人は結局座れません。

 

民主主義社会は少数派の意見は切り捨てられる

 

現代は派遣労働者が、正社員よりも法律上割にあわない扱いを受けています。しかしこれも多数決で決まる民主主義の社会である以上、避けて通れない道のひとつです。少数派の意見よりも多数派の意見が救済されます。そして人々はそれが正しいことだと望んでいます。

 

多数派の意見を超えて少数派の意見を優先する場合は、合理的で誰もが納得出来るだけの根拠が必要になります。障害者を救済する法律はその典型です。

 

民主主義が選択されているのは、それは国家から国民が勝ち取った権利です。社会主義に戻りたくないと聞かれたら誰もが否定するはずです。

 

たとえば日本という国で貯金封鎖という事態が起きたとき、多くの人は国民全員ではなく一部の富裕層が課税されることを望みます。それは中産階級の方が圧倒的に多数だからです。多くの場合そうするべきだと人々は考えます。

 

現在の雇用の仕組みも社員のクビが切れないように保護されていますが、これも理屈は同じです。90年に労働者の80%が社員だったと考えると、少数派の意見は切り捨てられます。

 

非正規社員が5割を越えれば、また時代の流れは変わります。

 

人をモノ扱いするのは人材派遣会社だけではない

 

こういう類の本は非常に多いですが、物足りなさを感じます。

 

書籍をだして改善を促したいなら、まずは社会と派遣の仕組みをしっかりと理解するべきです。自分が劣悪な環境に立たされることを経験して、目の前のことだけみて不当だと声をあげるのは少し発想が幼稚です。

 

どうして派遣が増えたのかその背景も知るべきです。

 

これを読んだ若い人たちが無知であることは罪だと知り、社会の仕組みをしろうとするのであれば有益かもしれません。

 

派遣者たちをモノ扱いする企業や経営者はどうかと思いますが、どこの社会にもそういう歪んだ人はいます。そればかりを誇張して話を膨らますのは、ストーリーとしては面白いですが、書籍としては物足りなさを感じてしまいます。

 

学生に人気な就職先の電通で若い女性の方が、企業からひどい扱いをうけて自殺しています。電通は30歳で年収1000万円超えるほどの羽振りのいい会社です。

 

人材派遣会社特有の問題かといわれると、そうではないような気がします。